書籍の紹介について

皆さんこんにちは。順天堂大学健康データサイエンス学部で、脳神経ダイナミクス研究室を主宰している徳田です。

最近、

「研究室に入る前にどんな勉強しておいたらよいですか?読んでおいたらよい本ありますか?」

という質問を受けることが非常に多くなってきました。そこで、勧められそうな本をこちらに記載してみようかと思います。

研究室で用いる知識は、例えば以下のようなものです:

  • 線形代数
  • 多変数の微分積分
  • 力学系
  • 情報理論
  • フーリエ解析
  • 機械学習
  • 計算論的神経科学
  • 神経科学の基礎知識
(研究室では気象や表面化学など神経科学以外の研究もしていますから、そのような分野を研究したい場合は神経科学の知識は別の分野に読み替えてください。)

大学院に入学する前に読んできたら良い本を聞かれた場合に、あえて少数だけ選ぶとすると、 力学系では『力学系入門(スメール・ハーシュ・デバネー)』もしくは『非線形ダイナミクスとカオス(ストロガッツ)』、 神経科学では『カンデル神経科学』、『脳の計算論(甘利俊一監修)』、 機械学習では『統計的学習の基礎(Hastie, Tibshirani, Friedman)』あたりでしょうか。

もしあなたが線形代数と多変数の微分積分に不慣れなら、まずはそこからしっかり勉強を始めてください。例えば、行列のランク、行列式、固有値と固有ベクトル、座標変換などや、テイラー展開、曲線に沿った積分、曲線の微分、グラジエント、ヤコビ行列、フーリエ変換などの知識は前提になります。

力学系

  • スメール・ハーシュ『力学系入門(第1版)』
  • スメール・ハーシュ・デバネー『力学系入門(第2版以降)』
  • ストロガッツ『非線形ダイナミクスとカオス』
  • 合原一幸『カオス学入門(放送大学教材)』
  • Edward Ott “Chaos in Dynamical Systems”
  • 郡宏『生物リズムと力学系』

神経科学

  • カンデルほか『カンデル神経科学』
  • ベアー/コノーズ/パラディーソ『神経科学 脳の探求』
  • カールソン『神経科学テキスト 脳と行動』
  • 甘利俊一監修『脳の計算論(シリーズ脳科学 1)』
  • 『脳単』
  • 『NEW薬理学』
  • E. M. Izhikevich “Dynamical Systems in Neuroscience”
  • 川人光男『脳の計算理論』

機械学習

  • Hastie, Tibshirani, Friedman『統計的学習の基礎 ―データマイニング・推論・予測―』
  • Bishop『パターン認識と機械学習』

その他、数学・物理など

  • 今井秀樹『情報理論』
  • 日野幹雄『スペクトル解析』
  • 田崎晴明『統計力学』
  • 清水明『熱力学の基礎』
  • 清水明『量子論の基礎』
  • 小出昭一郎『量子力学』
  • 松本和夫『多様体の基礎』
  • 齋藤正彦『数学の基礎—集合・数・位相』
  • 志賀浩二『30講シリーズ』

読み物

  • ラマチャンドラン『脳の中の幽霊』
  • David Marr『ビジョン』
  • 『脳科学のテーブル』
  • アントニオ・ダマシオ『デカルトの誤り』
  • コッホ『意識の探求』
  • 津田一郎『カオス的脳観』『ダイナミックな脳』
  • 木村敏『心の病理を考える』
  • ハーマン・ハーケン『自然の造形と社会の秩序』
  • 清水博『生命を捉えなおす』
  • 多賀源太郎『脳と身体の動的デザイン』
  • 蔵本由紀『非線形科学』
  • 大野 克嗣 『非線形な世界』
  • ディアク『天体力学のパイオニアたち』
  • チョムスキー『生成文法の企て』
  • 佐々木正人『アフォーダンス』
  • 佐藤文隆『破られた対称性』

計算論的神経科学で用いられる有名なモデルとしては:

  • ホジキン–ハクスレー(Hodgkin–Huxley)モデル
  • ホップフィールドモデル
  • ボルツマンマシン
  • パーセプトロン
  • フィッツヒュー–南雲モデル
  • Integrate-and-fire neuron モデル
  • カオスニューラルネットワーク
  • 蔵本モデル(Kuramoto model)
  • カオス的遍歴
  • マーの三つの階層


などがあります。あまり全てまとまった本はないかもしれませんが、それぞれどんなものか知っておくと良いでしょう。

本を勧めるということなど