研究紹介
皆さんこんにちは。順天堂大学健康データサイエンス学部で、脳神経ダイナミクス研究室を主宰している徳田です。この研究室では、「脳の仕組みを数学で解き明かすこと」、そして「複雑な自然現象を予測・制御すること」を中心に研究を進めています。脳や天気といった一見異なる現象も、非線形力学系という数学の視点から見ると、共通の構造や振る舞いを持っていることがわかります。 私自身は高校時代に神経細胞の教科書図に不思議を感じ、「なぜ単なる物理的な細胞の集まりから感情や思考が生まれるのか」という疑問を強く持ち、脳の研究の道に入りました。脳の研究を行っている研究室が多かった薬学部に進学し、修士課程まで電気生理学の実験をしていました。その研究も極めて興味深いものでしたが、脳の研究の世界に入り、生物を数学を使って研究する方法があるということを初めてしりました。大学の学部生の時までは敬遠して、理解できなかった大学の数学でしたが、その面白みがやっとわかるような気がしてきました。特に、複雑なシステムを要素還元的な手法ではなく記述する数学のパワフルさに感動しました。そこで博士課程からは、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで、応用数学の世界に飛び込み、今に至るまで数理モデルを用いた研究をしています。 研究室では、私(徳田)と特任助教の三ツ井先生を中心に、脳科学、気象学、非線形力学、化学、生物学、AI、機械学習など幅広い分野にわたるテーマに取り組んでいます。三ツ井先生はベルギー・ドイツでの研究経験を持ち、気候変動や豪雨制御など、地球の「健康」に関わる研究を展開しています。 一見、雑多に見えるかも知れませんが、この研究室で取り組んでいる研究にはすべて「時間的に変化するシステムを数学で記述する」という共通点があり、脳科学と気象学、化学反応など一見異なる現象を、統一的なアプローチで理解することを目指しています。 2023年に徳田1人で始まった研究室で、学部生配属もまだこれからですが、すでに三ツ井先生、博士課程大学院生、遠方から定期的に通う他大学博士課程大学院生、留学生、自主的に留学しに来ている学部生、技術補佐員などが所属しています。また、他学部や他大学の研究者と日常的に活発に共同研究を進めています。 研究は挑戦の連続であり、楽しいものです。自分で問いを立て、うまくいかずに試行錯誤し、それでも新しい発見にたどり着いたときの喜びは格別です。私自身も学生時代に、そして今でも、さまざまなことに苦労しましたが、どれも研究の一部であり、人生に役立つスキルとなりました。 最近では国際学会にも積極的に参加し、ウィーンでの地球科学会議では研究成果をポスター発表し、世界中の研究者と議論を深めました。研究を通じて、世界とつながる楽しさもまた大きな魅力です。 私たちは、「脳」や「天気」など、さまざまな自然現象の背後にあるダイナミクスを、数学とデータサイエンスで探究しています。もし「世界をもっと深く理解したい」「自分のアイデアを形にしたい」という思いがある方は、ぜひ一度私たちの研究室を訪ねてみてください。一緒に未来をひらく研究をしていきましょう。
神経系の計算論
中枢神経系における情報処理の仕組みを数理モデルによって明らかにすることを目的としています。
- 小脳顆粒細胞層の数理モデルに関する研究
- 海馬局所場電位の状態切り替えの数理モデル
- 睡眠リズムの数理モデル
非線形現象のモデル化と制御
複雑系における非線形ダイナミクスの理解と制御を目指しています。
- 気象制御
- ナノスケール触媒反応系においてカオスが生じる
- 生体分子システムダイナミクスの構造解析
機械学習アルゴリズムの開発
時系列予測や制御に適したニューラルネットワークやレザバーコンピューティングの設計を行っています。
中枢神経系疾患の病態解析・モデル化
神経変性疾患を中心に、ビッグデータと数理モデルを用いた病態進行の解析と臨床応用を進めています。
- 病院との共同研究による脳波解析
- 精神疾患の計算論的なモデルの構築
- 医療ビッグデータの解析手法開発